人間の価値とは…?

日本製少年 〜A BOY IS MADE IN JAPAN〜

及川中監督作品

主演:大沢茂生・嶋田加織・鈴木一功…他

主人公の少年田中(大沢)は、過去に親に暴行を加えたTDLの元清掃員でフリーター
新しい職を求めて町をぶらついている所で、心臓にペースメーカーを埋め込んだ少女(嶋田)に出会う
自らを「心臓サイボーグ」と言い張る、しがないティッシュ配りの少女に田中は興味をひかれる
職を求めていた田中は少女の雇い主(鈴木)に接触するが
彼は薬物売買・売春斡旋・武器(拳銃)密輸等を行っている生粋のヤクザだった
ヤクザに見入られた田中は偶然彼から手に入れた拳銃で、「仕事中」に売人の一人を射殺してしまう
ヤクザから追われ、警察の手入れにビクビクしながら
意を決した田中は少女と宛の無い逃避行に出る


少しカオスってて
凄く純粋なラブストーリーだと思います
ヒロインの少女は劇中でこう言っていました

「なんかさぁ…つまんねーんだよねこの心臓…
毎日毎日同じ間隔でドックドク言ってて
たまには私もドキドキしてみたい…」

ペースメーカーを埋めた心臓が「ドキドキ」する時…
それは彼女に「死」が訪れる事を意味します

内容的には不思議な感じです
撮影技法も一昔前の機材を使っている感じです
全体的にこの映画の趣旨は「スワロウテイル」以上に不可思議なものになっていました

今思えばこの映画のヒロインは
物語の最期まで本当の意味で「笑う」事が出来なかったんだと思います
事実ラストシーンの舞浜で・・・

「ねぇ〜!!今あたしすっごくドキドキしたの!!!
ほんとにほんとだよ〜!!!!!」

と少女は田中に叫ぶのですが
その時の彼女の笑顔は心の底から嬉しそうでした
自分が死ぬと解っていても
最期のその瞬間までの
生きている一瞬一瞬がとてつもなく価値のある物のように思えます

かけがえない喜怒哀楽は数瞬後
あっけなく崩壊してしまうものだとしても
その瞬間「存在してた」事はどんな事より輝いている
ふとそんな柄にもない事を考えてしまうような…
これはそんな映画だと思いました


輝いているその瞬間に最大の価値があるはず
少なくとも僕はそう思いましたが…