純粋無垢な衝動は大人の狂気より恐ろしい

イノセンス

2004年 押井守監督作品
出演(声優) 大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、榊原良子他

人形遣い事件(映画・攻殻機動隊)で草薙素子少佐(田中)が疾走してから1年
巷ではロクスソルス社製アンドロイド「ハデム」の暴走事件が起こっていた
公安9課のバト−(大塚)はトグサ(山寺)を相棒にその事件を追っていた
事件に関わったと見られるロクスソルス社の出荷検査部長が何者かに殺され
現場検証に向かったバト−はそこである少女の写真を見つける
その写真に何か引っかかるモノを感じたのか
バト−はその事を黙って写真を持ち去る

検査部長を殺害したヤクザを突き止め
その事務所を襲撃したのはいいが
その強行な姿勢の為上司の荒巻に叱責を受けるバト−とトグサ
二人は北方四島エトロフ電脳都市のロクスソルス本社に出向くように命令を受ける
そこで得た事件の真相
そして世界の向こう側へ行ってしまったバト−の守護天使は光臨したのか…


攻殻機動隊の続編で原作の中篇に位置する物語です
原作をなぞっているのですが、前作の続編という要素を取り入れ
オリジナルの物語に仕上げているあたりは流石と思います

劇中の中の哲学的な言い回し
それにちなんだアクション
サイバ−なのにまるで文学が支配しているかのような世界をかもし出しています
その中で気になった一言

「人の姿をしていながらカオスの中にいる子供とは何者なのか」

タイトルの「イノセンス」とは「純粋無垢」という意味ですけど
これはよく子供を指す言葉として使いますよね?
ですが子供は純粋さ故に力の加減を知らず
かつ自分が何をしてるか理解せず
そいうった「無意識の悪意」を行使してしまう事がしばしばあります
本人は遊んでいるつもりでも結果的に殺人を犯したりとか
そういった事は今の世の中にも多数ありますよね?

人間とはそういった衝動を内に仕舞い込み
世間のモラルを守って生活する存在ですが
「子供」という時期にはそういった制限が心に無く
衝動のままに活動してしまうという恐ろしさがあります
「人倫より知的好奇心を優先させる」
そういった衝動が子供を動かしていると言っても過言ではないかと

そういう意味合いでも「イノセンス」という言葉は
果たして単純に「いい事」と捉えてしまっていいのか
そういう疑問点がこの映画にあるような気がします
純粋さゆえんにどこか歪んでしまった人たち
そういった人間にスポットを絞ったのではないかと
主人公のバト−もそういう「歪んだ」人物ではないかと
今は思えるわけで

押井監督はそういう表現に長けてると思います

また、この映画は「犬」がキ−パ−ソンになってたりもするんですが
※もっとも押井監督の映画はほとんどがそう
ここで裏話を一つ
バト−の飼っているバセットハウンド
※ノベライズでは「ガブリエル」という名前がついている
実は押井監督の飼っている犬がそのままモデルになっているそうで
前作の「アヴァロン」という映画でも出演していたりします
良くも悪くも慣用句などで多用される「イヌ」という単語
※密偵なんかは「○○のイヌ」って表現しますよね?
人類の友とまで表される犬ですけど
では「犬」とはどういった存在なのか?
もしかしたら本当に良い意味で「イノセンス」なのは
人間ではなく彼ら「犬」なのではないかと

人間と物質(人形)の差とは何か?
そういう論点をベ−スに持ってきていて
かつ、そこに様々な哲学的要素を含ませてある映画だと俺は思います
正直下手なハリウッド映画よりよっぽど考えさせられるのではないかと

まぁ百聞は一見になんとやら
まずは皆さんが見て確かめてくださいな(笑)